第1章

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「そう、恵ちゃんと話していたんだけど、このオレンジは黄色色素のカルコンと、アントシアニンのペラルゴニジンが液胞で共存しているらしいんだ」 「正、俺も少し調べてきたけど、フラボノイド生合成系、つまり、カルコンやアントシアニンを作る生合成系から言って、カルコンとアントシアニンとが共存するというのは、簡単には説明できないんだ」 「義雄のいうこと、恵ちゃんと似てる」 恵ちゃんは得意げに話しだす。 「ね。遺伝子に詳しい義雄君がいうんだから間違えないわ、何か秘密がある」 「オレンジねー。調べてみるか。色素」 大樹が呟く。 「正、実験室にある液体クロマトグラフィー動くか?」 「多分、大丈夫と思うけど、分析カラムが使えるかどうか。メンテナンスしていないからね」 「皆んなでさ、役割決めてちょっぴりだけ各々時間を割いて調べてみよう。カーネーションのオレンジ」 大樹が仕切る。 「義雄は遺伝子に決まり。義雄にしかできない」 「正は育種と花色素分析、と言いたいところだけど、それじゃあまりに大変すぎる」 「正は色素分析かな」 「育種は俺。正のおじさんのところを紹介してくれれば、材料もいつでも取りに行ける」 「俺金持ちで、車あるしー」 「大樹さ、恵ちゃんは?」 僕は尋ねる。 「そうだね、恵ちゃんは正のサポート。色素分析だね」 「私、いいよ」 恵ちゃんは微笑んで快諾する。     
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