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「昨日さー、夜に学校の行事で肝試しあったんだけどねー。出たんだよ!出た!」
「不審者?」
「金魚じゃあるまいに」
「ちっげーよ!オバケだよ、オーバーケー!」
そう言って数人も顔の前に手を差し出してオバケの真似をする。さらりと貶された気がしたが話が進まないと思い、ここでは無視をすることにした。
「はー?このご時世にオバケなんて居るわけないでしょ。気のせいじゃない?」
カラカラと笑えばキッと睨まれた。あまりにも切羽詰まった表情に目を見開く。
「気の所為だったらこんな事になってねぇから!」
バッと龍真と八月一日の前に足を出す。日焼けが目立つそこには赤い手形がクッキリと浮き上がっていた。周りの子供達はひゃーっと声を上げた。八月一日はその跡をスッと目を細めて見つめ、龍真と言えば足を見たと思ったら興味を直ぐになくしたのか自分の影を見つめていた。
「……悪戯だとしたとしたら悪質だな」
「いったそうねぅー」
「体育館前にさ、トイレあんじゃん。外のやつ。そこで俺白い影に追いかけられて掴まれたんだから!」
日に焼けた健康的な肌は血の気が失せて少しばかり白くなっているように見える。こうして騒ぐ事で恐怖を和らげているような印象を受けた。
「この手の部分、すっごい掴まれてる感じするし気持ち悪いしで……かーちゃんに言っても気のせいって言われるんだもん……」
「ねぇ、キンキン、八月一日さん、助けてあげる事出来ないの?」
「もうハッチーとキンキンしか頼りないんだよぉ」
「ユーキを助けてやってよぉ」
「プール行く道にそのトイレあるから怖いよぉ」
掴まれた子供、ユーキが暗い顔になるとすぐさま子分たちが庇いでる。この歳でもうこんなに人徳を持ってるのかと龍真は目頭が熱くなるような感覚がした。
「ふーむ、私達は祓い屋とか拝み屋ではないからねぇ」
八月一日はレジの下の引き出しを漁る。そして一粒の丸い、飴のようなものが入った瓶を引っ張り出した。
「身体があったまる八月一日印の飴だよ。一粒、二百円」
「なにそれ」
「漢方とかなんか身体に良いものを沢山凝縮して甘ーくしたやつさ。一粒でヤバいのも吹っ飛ぶ身体の良さ」
にこぉと綺麗な顔に綺麗な笑顔をうかべる。赤色した丸いそれはツヤツヤしていてビー玉のようだ。龍真で検証済み。と龍真を指刺せば買ってきたジャーキーを頬張ってピースサインをする龍真が目に入った。
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