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「そこへ行って思いました。旅行に行って携帯の写メやデジカメで風景を撮る人って、海外共通ですよね。わたしたちは皆昔からそうやって、そういう場所に出会ったら気に入った風景を必死で心に保存しておくんです。古くからあった信仰のやり方でも、その場で思って構えたカメラや写メでも。方法は違えど、気持ちの出発点は、同じことではないしょうか。わたしたちが気持ちを留めるのは、何らかの形でそこに気持ちを『とっておく』ことで実現するのです。なぜなら愛することで、そこに自分が生きている、これから生きるわたしたちの人生への祈りがこめられているから」
九王沢さんは自信たっぷりに言う。
「だからこそ、わたしたちは彼岸でだって、ちゃんと繋がってるはずなんです」
ここまで話した時点で、すでに午前二時を回っていた。眠らない開港、横浜と言えど、今は束の間の静寂に沈む時間帯だ。
それでも全く眠気を帯びない僕たちは、まだずっと話し続けていた。話の跡切れに気まぐれな静寂が訪れるのを恐れるまでもなく、お互いの下手な気遣いが、相手の気持ちを挫くことを危惧させるまでもなく。そうして僕たちは、どちらからともなく、言語で表しがたい共感を、言語によって結びつけようとしていた。
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