Phase.5 埋葬された真実

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「全体的に主人公が受身過ぎなのが、気になり過ぎです。作者都合でただ動かされてるって言うか。自分が好きな人に他に相手がいることが分かっているなら、それをはっきりさせてやろうとか、行動や言葉に移さなくても上手く呑み込めない気持ちが消化されていかない部分の描写がないと、読んでる方はいらっとします。この人、自分の現実に対して無抵抗って言うか、いろいろスムーズ過ぎません?て言うか主人公、僧侶ですか?ヒマラヤで修業した高僧の恋愛なんですか?」 「さすが依田さんは、鋭いことを仰いますね」  それを聞くと、九王沢さんは、どこか悔しげに唇を噛んだ。 「わたしも同感でした。さっきのS‐O‐R図式を思い浮かべて下さい。人間は自分の状況判断のパターンで対処出来ない事態にあったとき、本能的にそれを経験として消化する作業を行います。そのためにまず、自分の言葉で現状を置き換え、把握できない部分を(あぶ)り出すんです。ちょうど生物の免疫機能のように」     
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