Phase.1 未知との遭遇

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 よし、と意を決した後で、なぜか九王沢さんはおもむろに話を切り出した。なに?その言葉を口にする前、小さい声で、よしっ、て言った気がしたけど。 「那智さん、わたしのこといつも九王沢さんって呼びますよね。もしかしてわたしの下の名前、ご存じありませんか?」 「えっ、知ってるよ。サークルの先輩だし、チェックしないわけないだろ。うちが代々カトリックなんでしょ。だからお父さんが聖書の中から日本人でも、外国人でも両方通用しそうな名前択んだって言ってたけど。確か」  するとなぜか九王沢さんは、途端に切なそうな顔になった。え、待って。まずかった? 「…知らないパターンでお願いします」  ええっ、知ってるし。でも本人の希望だからしょうがない。 「ご、ごめんね。知らなくて。…な、なんだっけかなあ」 「ヒントを出します」  これが言いたかったんだと言う顔で、九王沢さんは言った。 「高速道路に関係あります。途中にあるやつです」 「いや、だから聖書でしょ」  娘に道路関係の名前つけるって、日本の議員でもいないぞ。 「知らないパターンでお願いします」 「わっ、判らない。ごめんね、本当にダメな先輩で」  そしていよいよ何か決め台詞を言うのかな、と思ってたら、九王沢さんはますます悲しい顔に。なにこれ!?僕が悪いの?     
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