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「だから、慧里亜さんでしょ。確かElijah、キリストが磔刑に架けられたとき、助けを呼んだ預言者さんの名前からとったとかって依田ちゃんが言ってた」
うちの文芸部員は気になったことは大体調べるので、慧里亜さんのエリアが何者かは、皆が知ってる。接点少なくても九王沢さんと話せる唯一の話題の一つだ。
ちなみにエリアと言えば旧約聖書ではモーゼ以来と言われ、キリストが登場するまではもっとも再来を待たれていたと言う大預言者の名前だ。すっげえ。
しかしそこで九王沢さんは、蚊の鳴くような声で抗議した。
「なんで先に正解言っちゃうんですか…」
「だって何か言うの待ってたけど、何も言わないから…」
九王沢さんは愕然とした後、なぜか震える拳を握りしめ、決然とした表情で言った。
「くっ、九王沢インターチェンジサービスエリア!」
「それが言いたかったの!?何それ、どんな会話!?」
九王沢さんだと言うことも忘れ、僕は思わず突っ込んでいた。
「わたし、那智さんと、依田さんが話してるのみてて、ずっと憧れていたんです。まったく打ち合わせもせず、なぜあれほど素晴らしい言葉のやり取りが出来るのかと。ですからわたしもお二人のように、切れがあって、ライブ感ある、そんなスリルと機智に富んだ会話がしたいんです。絶対やってみたかったんです」
「あれさ、別にそんな高尚なもんじゃないから」
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