Phase.1 未知との遭遇

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「今日は沢山、お時間を頂きました。わたし、少しでも満足して頂けるよう、もっとがんばります。初めてだからなんて言い訳、したくないんです。ちゃんと、教えてください。だから那智さん、今日はわたしにいっぱい突っ込んでください!」  これ、ワシントンホテルの近くだった。当然、そこにいたカップルや家族連れが全員怪訝そうな顔で振り向いた。誰ひとり、ボケと突っ込みの方だと思わなかったに違いない。端目には完全に、僕は依田ちゃんと二股かけて、経験のない自分の彼女にホテルの前で淫語(いんご)を叫ばせてる、最低な彼氏だった。  しかしこれで分かった。九王沢さんが僕をデートに誘ったのは、いわゆる別の意味で僕に突っ込んでほしかったからなのだ。依田め、だましやがって。何がラストまでコースだ。本当はこれ、知っててわざと焚きつけたんじゃないだろな。  にしても、さすがは、難攻不落を誇る九王沢さんだ。大坂城や小田原城など目じゃない。数多の城攻め巧者が、突破できなかった理由がしたくもないのに痛感できる。
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