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この天野、構内で九王沢さんに目をつけ、そこから文芸部の部室に入ったのを見て、普段ほとんど接点のない同級生の僕に伝手を見つけたと言うからものすごい追跡力だ。僕の方は突然、話しかけられもしない人に話しかけられたのでびっくりしたくらいだ。今後はその情熱をぜひ社会の役に立つ方向に向けて、頑張って頂きたい。
ちなみにそんな狼の巣へ好奇心だけで飛び込んだ、果敢過ぎる九王沢さんだが。
これが全然無事に帰ってきたと言う。それで先の敗退宣言につながるわけだ。問題は、お持ち帰り以外では帰れない魔窟から、九王沢さんはどうやって無傷で生還したのかと言うことだが。
ちなみに天野は、近年稀に見る大物の到来を前に鉄壁の布陣を構えて待ち構えていた。スポーツ系、アイドル系のイケメン男子から、九王沢さんに話が合いそうな教養溢れる医大生、三ヶ国語話せる留学生までとよりどりみどりだ。
実際九王沢さんはそうした人たちと楽しくおしゃべりしたと言う。天野が揃えた中ではやはり教養チームがぐいぐいやってきて、かなり専門的な話などもしながら、時間はどんどん経っていったらしい。ちなみに開始から、他の女の子はいないも同然だ。
もちろん言うまでもないが、ここにいる男子の目的は九王沢さんを酔わせることである。当然、教養溢れる専門的な話は九王沢さんの席を立たせないためだけなので、別に何にも意味はない。むしろそう言うの、早く理解できなくなって欲しいのだ。
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