Phase.2 『好き』の科学

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「もうやめようよ…」  そろそろ本格的に苦悩する僕に、彼女は悪戯っぽく笑ってしか応えてくれない。 「いやです。なぜならここに、ある問題に対するヒントがあるからです」 「あのさあ」  九王沢さんね、それ、預言書じゃないからね。いくら名前が慧里亜(エリア)さんだからって、誰もそんな話納得してくれないからね。  と、普通の相手だったらお腹いっぱいになって話を切ったり、ああそうかもね、とか適当にごまかしたり、席を立っているところだった。だが、不思議だった。九王沢さんを相手にしてはなぜかそれが出来ないのだ。神々しいばかりの美貌や、魅惑のHカップのせいだろうか。いや、もしかしたら、言葉に出来ない別の何かのせいかも知れない。何かは判らないけど。  ちょうどそう思い出していたときだ。 「那智さんは、人間の直感を信じる方ですか?」  九王沢さんは唐突に聞いてきた。 「直観?」  同じ発音でも違う意味がある言葉があるので僕は、観光案内のパンフレットに文字を書いて訊き返した。 「いえ、観る方ではありません。感じる方です。外来語で言うならインスピレーション、予感、予見、さらには未来予知」     
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