Phase.2 『好き』の科学

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Phase.2 『好き』の科学

 女ってのは、分からない。分からないもんだ。  一度は言ってみたい粋な台詞だが、いざ本当のカオスに直面してみると、なんて辛いのだ。ハードボイルド気取ってる場合じゃない。この子、本当に分からない。九王沢さんについては、すでにこの時点で僕のこれまでの常識すらが音を立てて倒壊しそうだった。  逃げ出したい。だが一方でたとえ少しでも、あの九王沢さんが僕を好きだ、と言う可能性があるんなら、僅かばかりのその可能性に賭けたい貧乏性な自分がいた。だってもったいないじゃん。  分際を知らず、しかもなんてみみっちいのだ。悲しい。だがそれが男だ。例えこの行く手に更なるカオスが待っていたとしても。ただ目の前の欲望に向かって突っ走るそれが男だと叫ぶ、僕の中の何かが止められなかった。だって、なにしろ相手は血統書つきHカップなのだ。  しかしそこから先は幸いなことに、一般論的なカップルの誰もが経験するごく普通のデートになった。正直、待ち合わせの段階で僕と九王沢さんには異星人同士ほどの隔たりを感じたのだが、全くそんなことは気にならなくなるくらいにちゃんとしたデートだった。     
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