訪問者

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 毒々しいような、ピンク色の室内灯に照らされ、部屋の中央に趣味の悪い、ハート型の大きなベッドがあった。 正一はそこに腰を下ろすと、ネクタイを緩め、そのまま仰向けになってドサリと倒れ込んだ。  天井の鏡に映り込んだ自分と、目が合う。  ……だから、あの時は、かなり酔っていたしーーいろいろイライラしていたからじゃないか。  聡美はその場でじっと、そんな正一の様子を見下ろしていた。 と、正一が寝転んだまま、ジャケットの内ポケットから、チケットの入った封筒を取り出して、聡美に差し出した。 「それ、何?」  正一は差し出したままの姿で、動かないでいる。 「お芝居のチケット。来月あるんだ」  聡美は目を輝かせた。 「……えっ。私と?」  彼は笑って、体を起こした。 「他に、誰がいるんだよ」  覚えず嬉しそうに、聡美は下を向いた。  そのとき、部屋のドアをコンコン、と二回ノックする音が聞こえてきた。聡美が振り返った。 「……誰か来た」 「えっ」  正一は、首をかしげた。それから、軽い舌打ち。 「いやいや……ラブホテルだぞ? ここ」 「私、出てこようか」  言って聡美は、入り口の方に向かおうとした。正一は何度か手を振ると、それから大きく首も振った。 「いいよ。どうせ何々のサービスがどうとかいう話だろ」 「でもーー」  彼は一度咳払いをすると、呼吸と姿勢を整えた。
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