5人が本棚に入れています
本棚に追加
毒々しいような、ピンク色の室内灯に照らされ、部屋の中央に趣味の悪い、ハート型の大きなベッドがあった。
正一はそこに腰を下ろすと、ネクタイを緩め、そのまま仰向けになってドサリと倒れ込んだ。
天井の鏡に映り込んだ自分と、目が合う。
……だから、あの時は、かなり酔っていたしーーいろいろイライラしていたからじゃないか。
聡美はその場でじっと、そんな正一の様子を見下ろしていた。
と、正一が寝転んだまま、ジャケットの内ポケットから、チケットの入った封筒を取り出して、聡美に差し出した。
「それ、何?」
正一は差し出したままの姿で、動かないでいる。
「お芝居のチケット。来月あるんだ」
聡美は目を輝かせた。
「……えっ。私と?」
彼は笑って、体を起こした。
「他に、誰がいるんだよ」
覚えず嬉しそうに、聡美は下を向いた。
そのとき、部屋のドアをコンコン、と二回ノックする音が聞こえてきた。聡美が振り返った。
「……誰か来た」
「えっ」
正一は、首をかしげた。それから、軽い舌打ち。
「いやいや……ラブホテルだぞ? ここ」
「私、出てこようか」
言って聡美は、入り口の方に向かおうとした。正一は何度か手を振ると、それから大きく首も振った。
「いいよ。どうせ何々のサービスがどうとかいう話だろ」
「でもーー」
彼は一度咳払いをすると、呼吸と姿勢を整えた。
最初のコメントを投稿しよう!