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「それより、ちょっと話したいことがあるんだ」
また軽く咳払いをすると、正一はジャケットを脱いだ。それをソファの上に放り投げると、ネクタイも取る。
聡美はもう一度、入り口の扉の方を気にするように振り返ると、足元に手にしていたトートバッグを置いた。
☆
バスルームの扉がわずかに開いていて、照明が落とされた浴室から、少しづつ湯気が漏れ出している。
ジャグジー風呂の中の、赤や青のライトだけが灯されていた。
薄暗がりの中の、円形の風呂の中央に浸かっている正一と聡美の姿が、その鮮やかなライトで下から照らされている。
湯の中で体操座りした聡美を、正一が背後から包み込むようにして座っていた。
「ねえ……それ、ほんとに?」
聡美が信じがたい、といったように聞いた。そのうなじに、点々と細かな汗が綺麗に浮かびあがっている。
ジャグジーの泡が吹き出す、その激しい音だけが二人の耳に聞こえていた。
「……嫌なのか?」
彼は気持ち強気に言って、聡美の顔を覗き込んだ。どうしても、「うん」と言わせてやりたかったのだ。
聡美は黙っていた。正一は聡美のうなじに浮かんだ汗を舐めると、そのまま首筋を何度も吸った。
「もう、ウンザリなんだよ。こういう関係は」
言って、今度は背後から聡美の豊かな胸を揉みしだいた。
「……お風呂の中はイヤ」
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