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元気のないあいつをスキーに誘ったのが、一年と少し前。落ち込んで、酷く荒れていた。
仲間意識の強い奴だ、ランバートが攫われた時はきっと苦しかったのだろう。
でも騎士団の中でこいつは泣けないし、吐き出せない。師団長という肩書きが、こいつの素直な感情を抑制してしまう。
だから連れ出した。ここでならどれだけ泣いても見ているのは俺だけだ。俺の中にしまっておける。
いや、訂正しよう。そんなものまで俺は、独占しようとしたんだ。
あの夜、こいつは俺が「妖精さん」だと気付いた。ふざけたネーミングだが、妙にウェインらしくて気に入っていた。
あれも、俺の楽しみだ。酔い潰れたこいつを介抱するのは、俺の幸せだ。
反発しているこいつが俺に無防備に身を預けてくる。気の緩んだ笑みを浮かべている。何度、このまま犯そうかと思ったかしれない。
その度に、無理矢理されそうになって睨み付けるこいつの顔を思いだして、抑止した。
だが気付いたなら、隠すつもりはなかった。
試しに少し迫れば、真っ赤になっていく。それでもその表情に拒絶を感じなかった。
いけると思ったのだ、あの時。拒まれるなら焦るつもりもなく、上手く引っ張るつもりだったが、この時のウェインの顔には好意があった。
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