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私は目の前にいる肌も髪の毛も目も爪も洋服も全てが真っ白い人に問う。
「この世界は全て真っ白なんですか」と。
「シロ?全てシロとはどういうことでしょうか」
目の前にいる見ず知らずの女性は、垣間見える口の中も白い。
その事実は私をますます不安にさせる。
一層の苛立ちつつもなるべく丁寧にもう一度尋ねた。
「色ですよ。白色のことです。私が今見渡す限りのでいうならば、この世界は空も道路も建物も全部白い色をしてますよね。」と。
すると女性は困惑と怪訝な表情の両方を浮かべ少し黙り込んだ後、口を開いた。
「あの、すみません。ええと、イロとかシロとか仰る意味がよくわからないのですが・・・」
女性の返事の方が意味がよくわならない。
しかし戸惑うその姿に仮説が浮かぶ。
もしやこの女性は、白以外の色を見た事がない?
ならば色という概念は存在しない。
よって色の名称も不要となる。
そこで私はある恐ろしい考えが頭の中に浮ぶ。
いや、単に認めたくなかったのかもしれない。
それを確かめるべく、自分の足のつま先から手の平までをゆっくり眺めてみた。
靴もズボンも上着も全て白一色。
そして裾から覗く手の平全ても真っ白だった。
【了】
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