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朝、会社に行く準備をしている際、お気に入りのピアスが片方無くなっていることに気付いた。バーテンダーをしている恋人から貰った、シトリンのピアスである。
自宅は一通り探したが見つからなかったため、会社帰りに彼の家に寄ることにした。
彼の家に泊まる際、時計やジュエリーを置いているナイトテーブルを確認したかった。
バーテンダーの彼の出勤の時間まではもう少々余裕があるはずだが、もし入れ違いになったとしても合鍵を持っているため問題はなかった。
家を訪れると、玄関には私のものではないヒールの靴があった。
一瞬の間停止した頭は、一拍を置くとぐるぐると思考が回転する。
どう考えても行き着く結論は同じだった。
現実から目を背けたい想いとは裏腹に、足はまっすぐに寝室へ向かい、手は迷わずその扉を開けた。
そこには確信に近い予想と1ミリもずれていない光景が広がっていた。あまりにも出来過ぎていて、小さな笑いさえ湧き上がる。
ひとりの男と、ひとりの女が、ベッドにいた。ただそれだけだった。
男は、突然開いた扉の方を向き驚いた表情を浮かべたが、次の瞬間には開き直ったかのように無表情になった。
狼狽する女の表情が対照的で、脳裏に写真のように鮮明な光景が焼き付く。
私は一歩だけ寝室に踏み込むと、手に持っていた合鍵をナイトテーブルの上に置いた。
ナイトテーブルの上の置き時計の影に半分隠れたシトリンのピアスが見えたが、それを取ることはせず、片耳についていたもう一方を外して静かに合鍵の隣に置いた。
誰も、何も言わなかった。
私は寝室の扉を閉め、部屋を後にした。
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