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一方、青い鬼様と言われた火白はといえば、先に雪トがとさかに来るのを見たから、然程驚けなかった。鬼であっても人であっても、先に怒ってくれる者を見ると頭が冷えるのは変わらないのだ。
しかし、それにしても血を寄越せと言われても、はいそうですかとは言えぬ訳があった。
「お願いいたします!鬼の血がなければ、芯太の……私の息子の命が危ないのでございます!」
男は確かに、自分は江戸の商家の者であると名乗った。福禄屋という目出度い名を掲げた小間物屋の通い番頭で、名は幸七郎と言った。
その福禄屋の跡取りで、幸七郎とお千絵の長男である芯太が、明日をも知れぬ重い病にかかったのだという。
「お医者様にも匙を投げられました。なんの病かさっぱりわからぬと」
十日ほど前、急に元気がなくなったと思ったら、いきなり寝付いてしまったのだ。平時から体の弱い妹のお夏と違って、芯太は八歳になるまで元気そのものだった。七つの歳も、何の障りもなく超えてきた。
訳がわからぬ。しかし、事実として八歳の跡取りは布団の中で小さな体を火照らせて苦しんでいるのだ。
幸七郎が弱り果てて縋ったのが、神仏の類であった。霊験あらたかという、観音様におすがりしたところ、その帰り道に観音の使いだという如何にも神々しい女が、声をかけてきたのだという。
「それが、鬼の血かい?」
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