第一章-3

6/9
86人が本棚に入れています
本棚に追加
/268ページ
 残って頭を下げる幸七郎に火白はひらひら手を振った。 「これで熱は下がったがな、寝込んでいた分の体力までは戻っておらん。当分、体には気をつけてやれ。……それから、だな、先ほどの話なのだが」 「承知しています。仕事の話ですね」  笑み崩れた顔の幸七郎である。自分の子どもがやっと助かったこと、跡取りを亡くさずに済んだことがいっぺんに来て、嬉しくて堪らないのだ。 「お父さん?その人たち、だあれ?」  あどけない声が、廊下に響いたのはそのときだ。見れば、芯太が寝かされていた部屋と向かいの部屋の障子が開き、小さな女の子が顔を出していた。  肩上で黒い髪を切り揃えた幼い女の子で、かわいらしい小花を散らした赤い着物を着て、火白と雪トの額の辺りを見ていた。 「ああ、お夏。この人たちはね。……えーと、どう言えばいいでしょうか?」 「いやいや、おれたちに聞くでない。さっきお祓い屋と名乗ったから、それで押し通せばいいだろう」 「あっ、そうでしたね」  呑気に言った幸七郎は、お夏と呼んだ女の子と目線の高さを合わせた。 「お夏、この人たちはね、お祓い屋さんなんだよ。芯坊の病を治してくれたんだ」 「ほんと?芯坊、元気になったの?」     
/268ページ

最初のコメントを投稿しよう!