第一章-3

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 煙はしゅるしゅると音を立て、火白の持つ煙管に吸い込まれて消え失せる。煙が失せたそこにいたのは、十四、五歳ほどの少年二人組だった。幸七郎が眼を剥く。 「え、えぇぇっ?」 「何を驚いておる。鬼と言ったろう。怪しい術のひとつや二つ、使えんでどうする」 「自分で自分のこと怪しいって言っちゃ駄目だろ。てか、またこれなのかよ。この変化するときに全身の骨が傷むの、どうにかならないのか?」 「諦めろ。仕様だ」  濃い青の髪の少年は懐手をしてにやにや笑い、長い黒髪を束ねた少年は、痛いんだよな、と言いつつ、体の調子を確かめるように肩をぐるぐると回した。  先ほどの青年姿から比べれば、一尺(三十センチ)ほども縮んでいるのだ。 「火白さんに、え、雪トさんで?」 「そうだよ。俺たちは鬼だから、体の大きさもかなり勝手に変えられるのさ」 「うすらでかい男二人より、このほうが良かろう。家を狭くせんで済む」 「それは、まぁ……」 「それよりもほれ、妻と息子のところへ行ってやれ。このお夏嬢も待っておろうが」  火白が少し屈み込む。と、いきなりお夏は手を伸ばして、その額をさわさわと摩った。 「……あれ、なにかある?」 「こ、こらっ、お夏っ!」  後ろからお夏を抱え上げた幸七郎は、泡を食ったようだった。いきなり娘が、鬼の額を触ったのだから当然ではあるが。     
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