写真部とか、どうですか

2/6
前へ
/222ページ
次へ
「佐伯、部活はいいぞ、青春だ。明日の放課後、2階の一番奥の部屋の前で待っとけ。先生、皆を紹介するから」 「ちょっと、先生、俺、部活とか興味ないんだけど」 「まあまあ、入ってみればどうにかなるって、じゃあな、明日な」  白紙の入部届を押し付けて、ひらひらと手を振りながら、犬飼先生は教室を後にした。 「佐伯、なんか、災難な」 「おう」  通りすがりのクラスメイトが憐れむ目つきで頷く。  ひょっとして、いつも一人でいるから、いじめられてるとか思われたんだろうか。  別に、俺はいじめられているわけではなく、どちらかといえば好んで一人でいるのだが、今のご時世、先生たちも世間も何かと神経質になっているのかもしれない。一人でいる自由も尊重してくれ、パワハラじゃないのか、これ。  はがきサイズほどのぺらぺらの入部届を目の前にぶら下げて、俺は小さく溜息を吐いた。  仕方がない、といえば、仕方がないのだ。  この春から俺の通う公立高校は、自由な校風が売りの進学学校なのだが、ここ最近、学校内が荒れていた。特に目立ってやんちゃな生徒がいるわけでもなく、校則などあってないようなものなので反発する理由もないのだが、校内の空気がざわざわと落ち着かない。     
/222ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加