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頻繁に生徒同士で言い争いを起こしたり、自転車事故が増えたり、校内での怪我が増えたり。取り立てて騒ぐほどでもないが、春先まではもっと、和気あいあいとした雰囲気だったはずだ。
それに、先日のクレーム。学校近くのファストフード店で、うちの生徒が大声で笑ったり奇声を上げたりでやかましい、と数件のお叱りがあったそうだ。
今年の異常なまでの暑さのせいで、気が立っているだけかもしれないが、先生たちだって、黙って見過ごすわけにもいかないだろう。有り余る学生たちの体力を、健全で健やかな方向に発散してほしいと思うのも無理もない。
だからきっと。
部活にも入らず、教室でひとりアウトローを気取っている(ように見えるだけであって、別にそんなつもりはさらさらない)危うい高校生男子を、優しく導いてくれようとしているに違いない。
「写真部、存続が危ないからじゃない?」
今さっきまで、犬飼先生が座っていた席に、すとんと座って、同じクラスの山本さんが小首を傾げた。
「部員が激減しちゃってさ、部費がもらえないんでしょ。だから、幽霊部員でもいいから頭数が欲しいんだよ。犬飼センセ、写真部の顧問でしょ」
「そうなの?」
「みたいよ。なんか、イケメンの先輩がいなくなって女子部員ががっつり抜けちゃったのと、残りの男子が学校内の噂を解明するんだってオカルト部を立ち上げて、そっちに流れちゃったから」
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