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「学校内でね、けたけた笑う生徒がいるの。誰もいないところで、ひとりでけたけたって笑ってて。それでね、見かけた人に『誰だった?』って聞くと、何組の誰ちゃんだった、とか別のクラスの他の子に見えたよ、とか! 一緒に目撃したはずなのに、全然違う人に見えてたりするんだって!」
「お、おう」
「…ちょっと、怖くないの」
「ええと、怖いのは、けたけた笑ってるところ? それとも、一緒に同じ人を見たはずなのに別人に見えたところ?」
「もーう、ちょっとお」
山本さんがぷうっと頬を膨らませる。やばい、そこはどうでもいいところなのか。なんとなく、怖い気がする、が正解だったのか。
でも、山本さんのざっくりとした話し方だと、多分、何を話しても怖く聞こえない気がする。怪談て、語り手の語彙力や雰囲気づくりなんかの話術が要求されるんだな、と変なところで俺は感心をしていた。
「佐伯くん、まじめか。こんなキノコ頭だからいけないんだ」
訳の分からないいちゃもんをつけながら、山本さんは自分がつけていた花の飾りのついたピンで俺の前髪を押し上げる。
「あれ、佐伯くん、この傷、どうしたの」
「あ、これ、この間、自転車で転んで」
「痛そう、大丈夫?」
「ああ、うん、もう平気」
「なに、佐伯、どんくさーい」
けらけらと、横で聞いていた小野さんが笑う。その笑い方に、ふと、俺は思い出す。
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