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写真部とか、どうですか
「おい、佐伯。お前、写真とかどう?」
「え? は、ど、どうって?」
現国の犬飼先生が、藪から棒に俺に尋ねる。
もちろん、授業中ではない。2限の終わりのチャイムが鳴って、いつも通りに机に突っ伏して中休みをやり過ごそうとした時に、つかつかと歩み寄って来たかと思えば、突然前の席に座って、ぐるりとこちらを向いた。
よれよれのシャツに緩めに巻いたネクタイを、さらに指で解きにかかりながら、俺を横目でちらと見る。
「お前、部活とかまだだよな。写真部とか、どう」
「どうって言われても…」
うちの学校、帰宅部とか、なしだっけ。というか、秋の風が吹き始めた今更に、部活とか言われてもピンとこない。
入学以来ほったらかしにし、夏休みの間にすっかり伸びてしまった前髪の隙間から、犬飼先生を見返す。ぼさぼさの髪に無精ひげ、こんなにだらしなくて、いいのだろうかと、しげしげと眺めてしまうが不潔感はない。こう、かさっとしたワイルドなおじさん、という感じでかっこよくもある。
「よし、決まりだな。これ、はい、入部届」
「や、先生、俺まだなんも言ってない」
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