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人類のミライ
男は夕暮れの街を歩く。
一歩一歩踏み締める度に彼が身に纏った鋼鉄の鎧が擦れて金属音が鳴り響く。
その大きな背中に背負った重々しい威圧感を放つ戦斧は茜色の斜陽に照らされて鈍く輝き、持ち主に絶対強者の風格を与える。
兜の隙間から覗く瞳には冷たい、それでいて熱い闘志が宿っていた。
所々陥没して地面が露出しているコンクリートの上を歩く男に浴びせられるのは鋭い眼光。一つではない。十、二十、百……いや、それ以上だ。
男はそれの正体を知っていた。だからこそ、右手が無意識と戦斧へ向かう。
『タチサレ、ココハニンゲンノスミカジャナイ』
不意にそんな言葉が道沿いに建つ住宅から飛ぶ。
刹那、それに反響するように奴等は喚き出した。
『カエレ、カエレ、カエレ、カエレ』
『ニンゲン、キライ、ダカラ、コロス』
『ワレラノトチカラデテイケ』
罵倒や脅迫の声が雨音のように鳴り響く中、男はジッと意識を研ぎ澄ましていた。奴等の軍勢は凡そ六十匹程度、比較的中規模の群れらしい。大きな物になると四百から五百匹程度になるので一先ず安心、といったところか。
『ニンゲンニハシヲ!』
『『『ニンゲンニハシヲ!ニンゲンニハシヲ!』』』
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