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その最中でも研究は進んでいるが、文明絶頂期程の技術力は無く、一ヶ月掛かる研究にも一年近く費やすようになった。その中でも地道な努力を続け、メロウに関する様々な生態や謎を解き明かしている研究者達はまさしく人類の頭脳である。
「このまま立ち話を続けるのも悪くはないが、これを新鮮なまま届けないといけない。俺はもう行く」
「あっ、はい。私は門番の仕事が残っているので…」
「じゃあな、テイラー。また会おう」
ウィリンは革袋を背負い直すと、通路の先にあるガラスの扉へ向けて歩み寄る。
更に近くで見たそれはかなり大きい。176cmの彼よりも高さがあり、話によると運搬物を載せたトラックが通れるように設計されているようだ。
扉の側に取り付けられたボタンを押すと、透き通るそれが左右に開いた。ウィリンは開いた扉の中に入り込むと、其処に座り込んだ。
すると扉が閉まり、唐突に彼は浮遊感を感じた。床が降下している、これはエレベーターだ。地下と地上を続く、数少ない連絡線の一つとして民からは重宝されている。
地下へ地下へと続くエレベーターに揺られて数十秒、ピコンッという電子音と共に扉が開いた。
そして、ウィリンは眼前に広がった光景を見て、やっと実感した。自分が死地から生還出来た事を。
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