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奴等の大地を震わせる程の大合唱が始まる。
男は息を吸い込むと、戦斧を引き抜いた。柄を合わせて2m程ある得物を正面に構え、奴等の襲撃に備えた。
そして、
夕陽がビルの影に隠れ、辺り一帯は影に包まれた。
「……来る」
危険を察した男は身を低く構える。
それと同時に、奴等は姿を現した。
『ニンゲンヲコロセ!』
商業ビルの二階の窓から飛び降りて来たのは言葉通り『化け物』だった。
一見すると一般的な成人男性、肌の色を見る限り黄色人種。皮膚の下に隠れた筋肉は隆々としており、下手な人間よりも鍛え上げられている。
目を見張るのはそこではない。重要なのは、その上、首から上だ。
奴の頭部は人間の物ではない。鋭く尖った頭、獲物を捕らえる為に特化した巨大な眼球、肉体を守る為の強固で軽量な鱗が皮膚を覆っている。それはまるで魚類だった。
それは一体だけではない。マンホールの中から、放棄された店舗の中から、蹴破られた平屋の窓から、湧くように次々と出現する。其れ等は鱗の模様や胴体の傷以外は全て同じ姿をしている。
人間の胴体に魚類の頭部を持った奴等に名前は無い。地域毎で『悪魔』や『魚類生命体』と呼び名は違うが、公式の場などでは 便宜上『メロウ』と呼ばれている。
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