人類のミライ

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ウィリンと呼ばれた男は溜め息を吐いた。 「……開けてくれ、一刻も早く休みたい」 『その気持ちも分かりますが……一先ず奴等に寄生されてないかチェックさせて頂きます。貴方のような人なら大丈夫でしょうが、一応規則なので』 岩肌の隙間に隠された赤外線センサーがウィリンの身体を包む。 数秒程経った後にピコン、という軽快な機械音が鳴った。 『……はい、体内及び衣類に幼体の反応無し。寄生確率も0%、安全検査クリア、ゲートをお開きします』 そして重々しい低音を響かせながら、岩肌は二つに裂けて出入り口が現れた。これはメロウ達に住処が探知されないようにと擬態を施した門だ。 一見只の岩の集合体に見えるが、実は違う。この下には耐火性、対刃性に優れたアラミド繊維製のカバーが覆う鋼鉄の壁が埋め込まれており、並みのメロウ達には到底破壊出来る代物ではない。 ゲートの中に入ると、其処はウィリンが両手を広げても到底壁に付かないような広い通路だった。通路の先にガラス製の扉が見えたと同時に、強張った彼の身体から力が抜けた。彼は兜を脱ぐと、額に浮かんだ珠のような汗を鎧の袖で拭った。 両手を開閉して、生を実感する。 「ふぅ……生きて帰って来れたな」     
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