人類のミライ

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そんな事を呟いていると、不意に廊下の傍にあるドアが開いた。その中から姿を現したのは軍服を着用した小柄な女性だった。彼女はウィリンの血塗れの身体を見て、微笑んだ。 「お疲れ様です。今日もまた……随分と暴れたみたいですね。確か今日は森林都市に住み着いたメロウの群れの掃討、でしたよね」 「あぁ、思いの外数が多くてな……意外に苦戦した」 その戦いの熾烈さを、彼が身に纏う血濡れの鎧が教える。 「あらら…だからいつも言ってるじゃないですか。銃火器を持っていった方が断然楽になるって」 「だがな……俺は銃を巧く扱えないんでな。この、戦斧さえあればいい」 ウィリンは幼少期から不器用で、今や仲間内では主流となっている機関銃や拳銃を未だに使いこなせずにいた。 そんな彼は戦斧や中距離の投擲武器しか頼れない為、おのずと近接に特化した武装を強いられる。だからこそ彼は重々しい鋼鉄の鎧を身に纏い、戦斧を振り回しているのであった。 「…ところでテイラー、今日未帰還のメンバーは何人だ?」 軍服の女性、テイラーは憂いを帯びた表情を浮かべた。 「今現在で泥炭地帯へ調査任務の為向かった一部隊、三名が未帰還です」 泥炭地帯は此処から南西にある湿地帯だ。湿度が高い為、メロウの繁殖には好条件である事から個体数が多く、立地や植生調査などが遅れている地域で、頻繁に小規模な調査が行われる。     
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