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ウィリンも一度調査隊に参加した経験があるが、とにかくメロウが多かった。地表に現れている成体のみならず、泥炭の中では孵化したばかりで宿主を探す幼体が息を潜めている。六人程度で調査に向かったが、生存者は彼を含めて四名。その中でも無傷な者はウィリンただ一人、皆何処かの骨を折り、何処かに傷を負っていた。
「そうか……」
彼が頷くと、テイラーは怪訝な顔をした。
「何でそんな事を訊くんですか?」
「今日の戦闘でちょいと奴等の気性が荒くなっているように感じたからな。繁殖期が近付いてる事も関係してる筈だ」
基本的にメロウは昼間に活動する事は無い。人間が自らのテリトリーに侵入しても大抵は迎撃せず、警戒態勢になるだけ。しかし先程の群れは人間であるウィリンに明確な敵意を抱いていた。このような状態になるのは繁殖期や夜間のみである事を彼は知っていた。
「そうですね。メロウの繁殖期は十一月から三月の間、丁度今から突入する事になります。厳戒態勢を敷き、緊急的な任務以外は一定の戦績が無ければ受注出来なくなりますね。ウィリンさんは多分大丈夫と思いますけど……くれぐれも無理だけはしないでくださいね」
「……解ってる」
繁殖期のメロウは危険だ。自らの子を身籠もる雌を他の雄と取り合い、殺し合いにまで発展する。発情した奴等には見境が無く、視界に映った物を雄と判別すると問答無用で飛び掛かる程の凶暴性を持つ。
「あっ、そうだ。アリエル博士からの招集が掛かってましたよ、『頼んだ品を持って来い』って」
「…………分かった」
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