変わりゆく者

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「今僕がこの国にいる事をあの人は知らないはずです。僕があの人の子供だという事も公にしていないし、今後する予定もありません。僕はこの一年の留学期間が済んだら、普通にファルスに帰ります」 叔父は戸惑い顔で「じゃあ、なんでわざわざこの国に来たんだ?」と不審顔だ。 「この交換留学はマリオ王子の為だからですよ」 「マリオ王子の? この話しはアジェ王子からの提案だったと聞いているが?」 「貴方はアジェおじさんの事も知っているのですね」 「まぁ、それはな。彼がこの国の王子だと判明した諸々の事件に俺は散々巻き込まれたからな」 「では、マリオ王子が命を狙われていた事は……?」 「……そんな噂は流れていたが……事実なのか?」 「その辺の話しは本当に何も知らないのですね……」 叔父がどこまでの事を知っていて、何を知らないのかが分からない。カイトの父親エリオット王子は、やはり彼には何も話していないという事なのだろう。 「もし万が一ファルスで王子に何かがあった場合、疑われるのはファルス王国。王子は既にランティスにいる時点から命を狙われていたというのに、そんな事になっては困る、だからカイトはこちらに送られたのですよ。王子と交代でランティスにやって来た私達は人質のようなもの、カイトはいざという時の為の保険のような役割なのです」 「確かに交換で留学している王子の身に何かがあれば残されたファルスの留学生がその矢面に立たされるのは必然だな、はは、まさかたかが交換留学にそんな思惑があるとは思っていなかった。王子の留学は病気療養的なもので、他意はないと思っていたのだが、物騒な裏があったのだな」 「本当に貴方は、何も知らなかった……?」 「あぁ、全くな」と叔父は首をふった。 「しかも自国の王子を他国の人間に守ってもらうとは、全く我が国は一体何をしているのだろうな、情けない。だが腑に落ちないのはお前の存在。王子の息子だけが来たのならばいざという時にお前達の言う通りに保険の役割も果たすだろう。だが、お前は違う、メリア王家のユリウス王子?」 「私は王子ではありません、貴方もそれは分かっているはずです。母は王家と完全に関係を断っている、そもそもメリアは王政を廃止しようとしているのに、そんな事を言っても意味はありません」
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