変わりゆく者

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「それでも長らく存在が隠されていたエリオット王子の隠し子がメリア王家の人間と関わりを持っているというのは、どう考えてもあまり好ましい展開ではないな」 叔父は難しい顔でそんな事を言う。けれどある意味これは想定内の話でもある。彼がメリアを嫌っている事は知っていた、むしろ今までそれを言い出さなかった事の方が不思議なくらいだ。 「私はあくまでファルスの一国民としてカイトの護衛に付いています。メリアとの関係を疑われるのは心外です」 「例え俺がお前の言葉を信じたとしても、いざという時に人の考える事は大体同じだぞ。ランティスの人間はお前を信じない、お前にメリア人の血が流れている限りな」 「ランティス人は皆馬鹿ばっかりなんですか?」 ふいに傍らから声を上げたのはカイトだ。 「だから僕は嫌なんですよ、ランティスに来てからこんな事ばかり。自国至上主義は結構ですけど、その人間の個を見もせずにメリア人だからファルス人だからと頭からこういう人間だと決めてかかる。僕はそういうのは大嫌いです」 「はは、なかなか言うな小僧。顔はそうでもないが、そういう物をはっきり言う所は王子によく似ている」 「嬉しくないです、僕はあの人嫌いですから」 「嫌い? 父親を嫌っていて何故わざわざここへ来た? そんな風に思うのならファルスで大人しく暮らしていればいいものを」 「困っている人がたくさんいたからですよ。けれどその中に僕の父親は入っていない。僕の大事な人達を傷付けるような奴を父親だなんて思いたくもなかったけれど、僕の中に流れるこの血が役に立つならとそう思って来ただけです」 カイトは怒ったように叔父に断言する。叔父はその言葉にまた戸惑い顔だ。 「僕には生涯を誓った番相手がいます。それは貴方達が毛嫌いしているメリア人です。これを言えば貴方はもしかしたらお前はメリアに懐柔されているとでも思うのかもしれませんが、そんな事はどうでもいい。僕は好きな人と一緒にいたいだけ。それを邪魔する人達がいて、僕達を放っておいてくれないから僕はここへやって来た、正直ランティスのごたごたなんてどうでもいいんですよ、けれどこの国が崩壊すればその火の粉は僕にも降りかかってくる、ひいては僕の大事な人にまで……僕はそれが許せないだけです」 「これはまた驚いた」と叔父は苦虫を噛み潰したような表情を見せる。
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