変わりゆく者

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「王子の息子はランティス嫌いのメリア贔屓、これはますます持って厄介だ。王子の政策転換も相まって王家の信頼も失墜しそうな勢いだな」 「ランティスの考え方が古いんですよ、敵を作らなければ国を存続できないような国、そもそもおかしいと思わないのですか?」 「ふん、お前達はそんな事まで知っているのか?」 「知っているというより、実体験で差別を受ければ分かります。自分達が一番でそれ以外は全員それより下、そんな感覚は狂っている」 「だけどな、その中にいるとそれはそういうモノなのだと人は錯覚するようになる。それが多数を占めれば尚更にな」 「視野が狭い」 「それが我が国の今の現状なのだよ。ランティスは閉じられた国なのだ。井の中の蛙、大海を知らず、まさにそれだ」 「変えようとは思わないのですか?」 「王家の人間が率先してそれを行っているというのにか?」 叔父は俯き首をふる。 「いや、それは今までの話だな。正直俺は王子の今回の方向転換は歓迎していたりもするのだよ」 「そうなのですか?」 「ただ、やり方が乱暴すぎる。王子は他人の意見を聞こうとしない、それでは周りが付いてこない」 「その周りが敵だらけだとしたら……?」 「俺も王子に敵認定されているという事か?」 「例えばの話ですよ」 「さも有りなん、と言った所だな」と叔父は溜息を零した。 「俺は王子に苦言を呈する事が何度もあった、王子には嫌われているのだよ」 「何を……?」 「俺は兄貴とは違ってメルクードには留まらず各地を回る巡回騎士だった。色々な場所へ派遣されて色々なものを見てきた。その中でおかしいと感じていたのはメリア人への扱いだった……」 「……え?」 正直意外な言葉に驚いた。まさか彼の口からメリア人を擁護するような言葉が出るとは思わなかったのだ。 「少し長くなるが聞く気はあるか……?」 叔父が真っ直ぐこちらを見やる。私とカイトは顔を見合わせ「それは勿論」と頷いた。
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