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「俺ももうこの町には慣れたし、別にいつまでも構ってくれなくてもいいんだぞ?」
「う~ん? まぁ一応ユリ兄にも頼まれてるからなぁ」
ノエルは少しだけ困ったような表情を見せた。彼が「ユリ兄」と呼ぶのは俺の兄にあたる人物だ、正しくは俺の養父母の実子で義理の兄になるのだが、まぁ、兄は兄だ。ノエルは何故かその兄と仲が良い、交流などほぼなかったはずだし、今となっては兄より俺の方がよっぽど長く彼とつるんでいるのに、それでも彼はそんな事を言う。
「それにツキノ、俺と一緒にいないと色々面倒な事多いんじゃないの?」
ノエルはそう言って小首を傾げる。俺はそのとぼけた顔をまたぎりりと睨み付けた。
「それはアレか? 俺が女に間違われて町の男どもに言い寄られたりしてる事を指して言ってるのか?」
「まぁそうだね。面倒なんだろ? 一々断るのも大変だよねぇ、言っても女に間違われてってのはどうなの? ツキノは半分女なんだから間違いでもないんだろ?」
「俺は! 男だと! 何度も! 言ってる!! っっ……!」
思わず力んで声を大にしたら、またしてもの腹痛に俺はまた腹を抱えてベッドへと倒れこんだ。
「どれだけ力説されても、その姿見ちゃったらねぇ……」
ノエルは椅子から立ち上がり俺の傍らに寄って来ると、俺に毛布をかけ、その上から俺の腹を優しく撫でた。俺はそれがあまり嬉しくはないのだが、これがなかなか気持ちよくて困る。
「これ生理痛だろ? 温かくして、ゆっくりだよ、ストレスも良くないらしいって聞いた事ある」
「なんでお前がそんな事知ってんだよ……」
「うち母子家庭なんだけどさ、母さんも割と酷い生理痛持ちなんだよね。機嫌もすこぶる悪くなるから分かりやすいよ」
「嫌な奴だな」
「今更いい奴だ、とかツキノに言われたらそれはそれで変な感じだし、それでいいよ」
ノエルはそう言ってまた笑みを見せた。本当にこいつは変な奴だ。
しばらくノエルに腹を撫でられ、薬も徐々に効いてきたのか、腹の痛みは少しずつ引いていく、俺は詰めていた息を吐いた。
「……んで、お前俺に何の用だ?」
「別に用って程の事じゃないけど、手紙が来たから……」
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