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ぴぴぴ、ぴぴぴ
目覚まし時計のアラームが鳴って、ぼくは目を覚ました。わずかにひらいた瞼に刺さる朝の光がまぶしい。ぼくは布団からゆっくり身体を起こす。隣を見ると、もの凄い寝相でアオシズは眠っている。ぐぅぐぅと、アラームに勝るとも劣らない声量で、いびきをかいていた。
時計の針は、七時を指している。
ぼくはアオシズを起こさないようにゆっくりと布団から身体を出して、そして朝の支度を始めた。
東京都杉並区高円寺。
JR高円寺駅からすごく近くにあるぼくが住むアパートは、築五十年にも至ろうかという、とても古い、すごく気を遣わない言い方をするならば”ボロイ”建物である。
なぜかゴキブリこそ出ないものの、少し歩くだけでも床は軋むし、隣人がアダルトビデオを見ては女優の喘ぎ声がアパート中に響くし、風呂どころかシャワールームもない。洗濯機は外――部屋の前の廊下に一台置かれている。広さは六畳程で、本来一人で暮らすのがやっとの狭さである。たぶん一人暮らしを予定して、建てられた建物のはずだ。そうに違いない。そうに決まっている。
しかしぼくらはそんな狭さの一室で、二人。
アオシズと暮らしている。
目覚ましのコーヒーを淹れている所で、アオシズが「ん~~~~!」と大きく伸びをしながら、目を覚ました。寝ぼけまなこで、ぼくの方を見た。そして
「あーあたしも飲むぅ」とだるげな声を出した。
「ミルクは?」
「たっぷり。砂糖もね」
わかりきってはいたけれど、ぼくはミルクと砂糖を準備して、アオシズのコップに注いだ黒々と光る海に投入。色が段々と変わっていく。漆黒からベージュ。だんだんと、淡くなっていく。ぼくは何も入れる事なく、コーヒーを口にした。
「ん!」
アオシズが布団から身体を出さないまま、手だけを伸ばしてアピールしてくる。ぼくはその伸ばされた手に、「こぼすなよ」と言いながら、コーヒーの入ったコップを手渡した。
朝だからだろうか。
アオシズの髪の色が、いつもより青い。
普段がやや水色がかっているのに対して、今だけ、この時間帯だけは、どうしてだろう。濃い青になる。まるでアオシズの髪の毛だけが、深海に繋がっているような、そんな錯覚を覚えた。ぼくはまだ寝ぼけているのかと、頭を振る。よし、目が覚めた。
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