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悪い人はおびえの中にいる。そして他人の幸福など駄目になってしまえと思っている。
あしたは湯豆腐でも食べようか。鶏むね肉と絹ごし豆腐、ほうれん草、しめじ。ポン酢で食べる、僕は家族というものの中に、また戻れるのだろうか。家庭を持てるのだろうか。お祭りというものは、必ずしも全員にその仕様が合っているものではない。結婚もお祭りの中にあるだろうが、あまり……
僕は外に出て自動販売機でグアバ十パーセントのジュースを買った。おいしかった。いつだって侵略というものは正当化できない。エヴァンゲリオンのネルフ本部には666プロテクトがかかったが、シンジ君はエヴァ初号機ごと十字架に付けられた。人々が救済されて、世界には緑色の十字架が立ち並んだ。
たしかに僕は肉を食べる。魚も食べる。そのことを言い逃れするつもりはない。でも、悪い行為でも、それが快楽なら善であり、不快なら悪である。
真岡(もうか)ビル三階、あさがお。
窓を閉めて朝の空気を閉め出した。ここは朝六時からやっているのである。
二十四時間営業のスーパーでおにぎり二個と野菜ジュースを買ってきた。それを食べながらノートPCで原稿を書く。自営業は発見の連続で、なかなか楽しい。でも、そういう感覚を二十歳ごろから持ち得ていた人も多いのだろう。それは…… 僕の、失われた青春という苦痛の記憶ではなく、普通の人のありきたりな幸せ。物事に取り組んでいくし、やりがいもあって自信も持てるという、普通の人の幸せ。
しばらく原稿を書いてから、ティーバッグの紅茶を飲んだ。お菓子はない。この先、僕の仕事を広げていくその根拠は、世間というものの暖かさだといっても過言ではない。疑っていたけれど、きっと僕の仕事は本当に文筆業(作家業)なのだ。
人気。きっと今の僕にはそれがあるのだ。人気があるうちが華。
福田さんが来て、「あら、紅茶? おいしい?」と訊いてきた。
おいしいです、と僕は答える。
きっと 長良さんはイギリス生まれなのね、と福田さんは言った。普通の紅茶もおいしいのだが、アールグレイもふわっと香っていいものだ。紅茶にはベルギーワッフルも合う。
思えば二十年ほど文章を書いてきた。
今日の夕飯は、自分で作る豚汁。こんにゃくとごぼうは入らないけれど。
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