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そしてどうしてか、機械的な印象を受ける。
どこかまるで、作り物のようだと。
然し、その覚えた機械的な違和感は一瞬で、そんな事よりもと少女の言葉に反応してしまった。
「あの、何なんですか。俺ん家葬式は西本願寺なんで、キリスト教とかそういうのには興味ありませんよ」
東本願寺だっただろうか? いつも母が「どっちだったっけ?」と、親父側の親類の葬儀の度に首を捻っては、顰蹙を買っている。
長男に嫁いだ嫁だというのに、長男の家の葬儀の上げ方を未だ覚えていないのかと、とっくにくたばった親父側のばあちゃんからは、度々お小言を言われていたそうだが、母は「私が結婚したのはお寺じゃないですし」と、平然と打ち返していたそうだ。天然というものは恐ろしい。怒られているという事にすら気付いていない。そんな母親の元で暮らす所為か俺達子供達も、親父が西なのか東なのか、未だによく分からないまま葬儀に参加している。破天荒なファミリーだ。親父もどうでもいいと思っているらしく、そういう点では全く長男らしくない。
「旅の準備はこちらで整えております。さあ勇者様、いざ、己が使命を果たす旅へ!」
「…………」
確かに我が家の破天荒ぷりについてたらたらと考えて放置していたのは謝るが、それにしたって人の話を聞かない女だと、ドツいてやろうかと思った。
然し。俺は紳士なので、女性を殴らない。
殴りてえなと思うぐらいにムカつく頻度は、短気なので正直頻繁にあるが。
「……何なんすか、ここ」
「ここは洞窟です!」
見た分かるわ。
そういう意味合いの質問じゃあねえんだよ。
「勇者様。時は金なりです勇者様。さあ、これをお持ちになって、運命の導きの元へ!」
「あほみたいに呼称を繰り返すんじゃねえ。つか何なんだよ勇者様って……」
向かい合ったあほシスターが、右手で脇を示した先には、ぱんぱんに膨れ上がった茶色い大きな、登山用を思わせるような丈夫そうなリュックと、剣道の防具みたいな金属製のものが一ヵ所に固められ、地面の上に置かれていた。何やら、鞘に収まった剣まで見える。
見間違いでなければそれは、全て西洋風なデザインを施されており、もっと具体的に言うならば、それを纏えばゲームの冒険者がしているような格好に、かなりの完成度で近付く事が出来るもの達だった。
俺はその荷物を、じっと見たまま口を開く。
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