終末の週末

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その時気が抜けたのか大きなあくびが出た。途端、強烈な眠気に襲われる。胸の痛みはないが酷使した疲れか頭痛だけは引いてくれないし。「そろそろ帰りますね」そう言って私は立ち上がり、コートを羽織る。 「気を付けてな」 「はい、ご馳走様でした。これお会計です」 「いいよ。こんなものは」 「駄目ですよ。そう言っちゃ」突っぱねようとする老人に私は無理やりお金を握らせる。頑な抵抗を見せる老人も「私はまた客としてきたいんです」と口に出したところで動きを止めた。 「このカレーとっても美味しかったです。二日置いて熟成させたらもっと美味しいんだなと思えるくらい。だから、私絶対にそれを食べに来ますから」  自分で言って、私は覚悟を決めたように、黒いノートを取り出して、走り字で書き込み、老人に見せた。 『絶対、案欄にカレー食べに行く』 「そいつは……」言葉が出てこないのか、老人は口を開けたまま言葉を発しない。  来ますから。念を押すように私はもう一度囁く。 「嬉しいね」老人は笑みを浮かべた。来た時と同じ、にこやかな笑みだ。「それじゃあ、こいつは受け取らないとね」  また来なと彼は言葉を紡いだ。私は首肯し、店を出た。  数時間ぶりの外は、変わらぬ沈黙した街だ。車もなくて人もいない。皆、どこかで終わり方を探しているのか。日は傾き始め、あと数時間もしないうちに空はどっぷりと黒く塗り潰されるだろう。 「今日は、もう帰ろう」     
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