終末の週末

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 こんな時に、世の中の反応を見るために、情報端末を持っておけば良かったのにと後悔するのだが、ないものは仕方ない。単にお金がないという理由もあるが、狭いコミュニティで生きていこうとしたのは私の判断であり、さびれた田舎町で呑気に暮らしている私には無用の長物だと遠ざけていた。それがまさか、世界の終わり云々なんて巨大な問題でさえ、情報端末がないと蚊帳の外になるとは想定外であった。情報化社会の現在、受け口となる端末を持たぬことは、いい意味でも悪い意味でも世間とは完全に隔離されるようだ。 「さて、どうしようか」  独り言は 白い壁に消えていく。背もたれに身体を預け、天井を仰いでみるが、見慣れたものが映るばかりで何の発見もない。私はため息をついた。  彼の話を信じる、つまり世界が終わることを前提としたうえで、今後どうしようかと悩む。彼の話では世界が終わるのは十月第四の日曜日。正確な時刻は分からないが、夜になるだろうという事で、今は十月第三の金曜日。午後十時を少し回ったところだ。自宅の書斎で万年筆を片手で遊ばせながら、私はゆらゆらと思考を流している。  よくある、世界が終わる前にしたい事なんて考えたことはあるが、確固たる答えに辿り着いたことは私には無かった。優柔不断、自己主張がないと自覚していたけれど、現実に世界が終わるとしても、こうもが思いつかないとは自分に呆れてしまうほどだ。  もっと前もって予告があったら何かしら思いつくのだがと、言い訳を吐きそうになるが、情報を捨てたのは私であり、そもそも今回は奇跡的に事態が起こる前に知ることができたのだから、文句は言えない。 「カレー……」     
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