終末の週末

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 始まった掃除は、年末の大掃除のように、細かい所まで行われていく。照明のカバーや、エアコンフィルター、カーテンレールの上部分も、普段はしないようなところまで。  おかげで、簡単に一日は潰れ、清掃を終える頃にはもう日が暮れつつあった。私は冷たくなる前に洗濯物を取り込んで畳む。  呼び鈴が鳴ったのはそんな時間だ。誰だろうと推測するが、答えは浮かばない。不気味であったが、私は特に警戒もせず、玄関の扉を開けた。 「やあ、こんばんは」 「ああ、貴方でしたか」  その姿を見て、数時間ぶりに私は声を出した。変わらずの黒いスーツを着込んだ男性は、私がよく知る人物だった。  彼は、私に世界の終末を教えてくれた人だ。老人と同じで、名前を聞くことはなかったが、それを差し引いても私の交友関係で最も信頼している人であった。  彼は自身の事を学者だと名乗った。私にはまだ年若い青年にしか見えないが、私よりもずっと長生きだ。落ち着いた物腰なのはそのためなのか。彼はしゃべり口調は役者の語りのように心地よく入ってくる。 「どうしたんですか。こんな日に」  訪ね人は、笑顔を崩すことなく話始めた。 「うん。実はね、少し問題が起きたみたいでね」 「問題? ですか」 「まあ、プログラムの齟齬みたいな話さ。上がらせてもらっても良いかな」     
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