終末の週末

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ベッドだけが置いてある寝室は、自宅の一番日当たりのいい部屋だ。私はベッドに飛び込む。軋む音がして、反発で私の身体は少し宙に浮いてまた落ちる。無理して買ったダブルサイズのベッドは、とうとう誰かと眠ることはなかったけれど、寝相の悪い私でも、朝目覚めたときにベッドから落ちていることがないという利点だけを大事にしておこう。ないものねだりをするには、もう遅いだろうから。  リモコンを操作し、明かりを消す。 「おやすみなさい」  独り言の挨拶は、天井へと吸い込まれていった。  土曜日。  眩しさで目を覚ました私は、顔を顰めたまま大きなあくびをした。昨日カーテンを閉め忘れたなと反省しながら、身を起す。時計の針は七時半を回ったあたりだ。  声を出して伸びをした後、窓を開けた。冷たい風が頬を撫でて、少しずつ頭を覚醒させてくれる。雲一つない青空に、太陽は嬉しいのかより一層眩しく輝いている。  私は目を細めて窓の景色をしばらくの間眺めていた。高台にある私の家は、眼下に街を見下ろせる。民家ばかり立ち並び、人通りもあまりない。目につくものと言えば、町工場の煙突と、廃校になったまま崩されることがなかった小学校。遠くには遊泳禁止の海が見えるが、本当に申し訳ない程度のものだ。特段好きでもなかった風景だが、少しでも目に焼き付けようとするのはもう見れなくなるからだろうか。     
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