終末の週末

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安堵と緊張が入り混じった吐息だ。 ドアノブを掴む手には汗がにじんでいる。心臓の鼓動が少し早足になるのが分かった。 あまりに静かな街には、誰もいないような錯覚さえ覚えさせる。 確認はしていなかったが、そもそも今日この店はやっているのだろうか。ああ、それと。彼は、いるだろうか。 その思いが身を固くさせた。 私は扉を引いた。抵抗はなく、扉は音を立てて開く。来客を知らせる鈴の音がなる。 「いらっしゃいませ」  低音のかすれた声が私を迎えてくれた。私は顔を上げた。にこやかな笑みを浮かべて、カウンターに立つ老人は私を見ていた。 「よく来たね。こんな日に」 「ええ、ここのカレーが食べたくなって」 「嬉しいね。とりあえず、掛けな」  言われて、私はカウンター席に腰かけた。店内には客は誰もいない。沈黙をごまかすようにいつもはつけていないテレビの電源が入っていた。私の目線が向けられたのが分かったのか老人は黙って電源を切った。「退屈だったんでね」 コートを脱いで汗ばんだ身体を冷やすために手で仰ぐ。「ほら」と老人がおしぼりをくれる。ひんやりとしていてとても気持ちが良い。 「人、いないだろう」     
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