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「いやーでも、――ちゃんが好きならそれでいいと思うんだけどね。あくまで私の個人的意見なので。でも、もっと露出が少ないほうがいいと思うんだけどなー寒いし」
聞いてもいないのに彼女は、華やかな声で私に語り掛ける。確かに、ショーウィンドウに飾ってある服は私にはとてもじゃないが似合いそうになかった。革張りのこてこてとした印象を受ける、胸元の空間を大きめに切り取ったトップスに、短めのタイトスカート。側面には深めのスリットが入っている。コートとの組み合わせに最適と書いてあるが、わざわざコートを羽織るくらいならこんな格好をしなくてもいいのではないかと思ってしまう。
おしゃれの為だと言われれば納得しそうになるが、極端に寒さに弱いので、生憎とこの時期に関しては、服は防寒性を重視してしまうのだ。おかげで、隣にいる彼女とは同じ指定スカートの長さが十cm以上も違う。ひざ上丈のスカートなど考えたこともない。できることならズボンで過ごしたいくらいなのに。
「美咲さんなら、似合うんじゃない?」
別に見ていた訳じゃないよと言おうとして、私はその言葉を飲み込む。せっかく、彼女との会話の種ができたのだ。せっかくだから利用させてもらうことにした。
「うーん。……いや、無理無理。私この服が似合うほどスタイルよくないし。――ちゃんくらい背があったら考えてみるけど。まあ、まず値段的に無理だよね」
少し考えて、美咲さんは首を振った。それと同時に二つ結びの桜色の髪が揺れる。それを視界の端で見ながら、私はショーウィンドウに意識を向けてみる。派手に飾られた衣装の下に、6桁の金額を申し訳なさそうに記してある。ブランド物といった奴だろうか、彼女が言った通り、残念ながら高校生には少々手が届きそうではない値段だ。
「大人になったら着るかどうかだねー」
彼女は間延びした声でそういって、ショーウィンドウに向けていた視線をこちらに向けた。
「突然声かけてごめんね。――ちゃんが一人でいたのが珍しくてさ」
屈託のない笑顔を向けて、美咲さんは今更ながらの台詞を口にする。そして私の反応を待つ前に、ゆっくりと表情を変えて。
「なにかあったの?」
特段、変わることのない華やかな声でさらりと美咲さんは尋ねた。
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