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美麗な空と山の色彩にその身が包まれる中、忠彦は強い眠気を感じた。さゆりに、少し寝ますと言い目を閉じた。心地よい感覚に体が抱かれていった。体が温かく空に舞い上がるような、気持ちがいいな、とても。忠彦は眠りに落ちていった・・・
何か音がしたような気がした、他の乗客の張りつめた声が聞こえたような・・・
忠彦は目を覚ました。
え?
彼は、文字通り宙に浮いていた。
目の前で、自分の乗っていたバスが横転した状態で道路を外れて、山肌に突っ込んでいた。忠彦は驚いた。
何なんだ、夢なのか・・・
周囲を見回した。他の乗客も自分と同じく、宙に浮いている。中には眠った状態で空間を漂っている者も。さゆりがいた。彼女も自分の状況が理解できていないようだったが、声を出さずともさゆりの言葉が直接頭に響いた。
事故です・・・
見ると、大型トラックが、バスの手前で同じく横転していた。前面のガラスは割れ、運転手は血だらけで・・・
その上に、ふわふわと漂っている男の姿が・・・あれはトラックの運転手か。
俺は、死んだのか・・・
改めてバスを見た。バスも前面がほぼ破砕している。そこには制服を着た運転手の姿が空中にはっきりと。
他の乗客を見ると、姿が明確な者と、半透明というか、おぼろげな者も。おぼろげな者達は、ゆらゆらとその身を揺らしながら、バスの中に引っ張られるように戻っていく・・・そして肉体の中へと・・・姿がはっきりしている者は糸が絶たれたように、そこに佇んでいる・・・
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