最後の選択

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何でこんなこと話したんだろうな・・・ 忠彦は思った。単に誰かに聞いてもらいたかったか、それとも彼女の温厚な両目に気を許してしまったか・・・ 典子、和也、そしてかえで・・・忠彦は三人を思い浮かべた。妻と子供、彼は半年前に事故で三人を一度に失った。昼間、かえでを連れて病院に行き道路に面した駐車場で降りた三人は、暴走したRV車に撥ねられた。 三人とも即死だった。病院の目の前だったが、どうにもならなかった。 かえで・・・娘を思い出すと忠彦は鬱な気持ちに引きずり込まれる。かえでは精神を病んでいた。幼い頃は普通だったが、思春期の頃からどことなく距離を置いた態度で家族と接するようになった。それは段々と他人行儀なものとなっていった。高校を卒業し就職してからは、それは露骨なものになり、回りとどう接したらいいか分からないのよといつも声を張り上げて泣いた。仕事を辞めてからは、更に激しいものとなり、あんたたちが悪いのよ、あんたたちがと妻と自分、そして兄である和也にも暴力を振るうようになった。 原因は分からない。繰り返し病院に通った。医師からは薬を処方され、忍耐と我慢の大切さを伝えられた。親の教育が、などと言われなかっただけ良い医者だったのかもしれない。     
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