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妻の典子は自分を責め、何度もかえでに誤った。ごめんね、ごめんねと。その度に、うるさい黙れとかえでの叫びと共に典子は叩かれた。
息子の和也には恋人がいた。結婚を考えていたが、彼女がかえでの事情を感じ取ると、少しずつ離れていった。忠彦は和也に謝った、すまないと。和也は、しょうがないよ、誰のせいでもないと返答した。彼は一人暮らしを望んでいたが、家を出ることはしなかった。この状態でそんなこと出来ないよ、自分がいなくなればかえでの暴力が二人に集中するからと。
三人とも生傷が絶えなかった。それが七年続いた。あんたたちが・・・かえでが、自分たちのことをお父さんお母さん、兄ちゃんと呼ばなくなってからずっと・・・
まだ自分はマシな方だったのかもしれない。三人でかえでと向き合っただけ。世間には一人でこういうことを背負う者もいるだろう。三人で苦労を分かち合う中、希望も持った。きっと何とかなると。だが、三年四年と月日が経過すると、やつれた典子と和也を見る中、忠彦は内心では思うようになっていた。かえでが死ぬことを。
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