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MASTERPIECE
8月の日差しは、肌に痛みを感じるほどの熱と紫外線に湿度を混ぜ、容赦なく地表に振りまいていた。
今年は異常気象だという。気温が40度を超えているとニュースは報じていたが、百葉箱で40度なら、あたりの気温は普通に40度超えだ。
御陵佳樹は、コンビニ袋を片手に横断歩道で信号待ちをしながら、晴れ渡る夏空を忌々しく見上げた。
時間は午後1時過ぎ。中身は本日の昼食のサンドイッチにタバコ。それに缶コーヒー。
しかしこうも蒸し暑いと、会社に戻る前にサンドイッチが傷んでしまいそうだ。
目の前を車が通り過ぎる。その遙か先には、アスファルトに揺れる蜃気楼。遠くの山には入道雲がむくむくと湧き、青空を灰色に塗りつぶしながら、雲がこちらに迫ってくる。ゴロゴロと遠くで聞こえる雷の音。じき雨が降ってくるだろう。
この強い日差しでは、晴れていても天気はころころ変わる。大気の状態も不安定だ。
事務所はこの横断歩道を渡ってすぐ、歩けば3分もかからないのに、ここの信号は待ち時間が長く、3分なんて余裕でたってしまう。
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