21人が本棚に入れています
本棚に追加
***
翌日から、ヴァロンは朝早く仕事に出掛けて行った。
夜に帰ってくるけど、遅くて……。
次の日も、また次の日も……。
ヴァロンは朝から晩まで仕事。
帰って来ても、夕飯を済ませるとまた夜中まで机に向かって仕事。
最初起きて待っていたけど「先に寝てて」って、いつも言われちゃって……。
すっかりすれ違いの生活だった。
「……寂しい、な」
ヴァロンのいない部屋。
朝から夜までヴァロンを待つ生活。
召使いの時はいつも一緒だったのに、恋人になった今の方が離れ離れなんて……。
シーンとした家の中で、募る想い。
沈んだ気持ちを振り払って、私は洗濯しようと昨日ヴァロンが着ていた服を手に取った。
……あ、ヴァロンの匂いだ。
……。す、少し……だけ。
彼の大きなシャツに袖を通して、自分をギュッと抱く。
フワッと薫る、優しいヴァロンの匂い。
ーー抱き締めてほしい。
そんな気持ちで、いっぱいになった。
最初のコメントを投稿しよう!