21人が本棚に入れています
本棚に追加
「……全く。
サインなんて誰でもいいだろうに……。
あの男に強引に、何度も頼まれたよ。
『貴方に認めてもらえなくては、意味がない』……とな」
証明書を驚いて見つめる私に、アルバート様が溜め息交じりに、でも優しい声で教えてくれた。
この国では18歳になれば、親族の同意が無くても結婚出来る。
友人や職場の人のサインだけで、いいのに……。
ヴァロンはそれをアルバート様に、頼んでくれたんだ。
私の祖父に……。
結婚を許してもらう為に……。
何度も何度も、アルバート様に会いに行ってたの?
私は、居間に戻って来て淹れた紅茶をテーブルに置くヴァロンを見つめた。
彼は私の視線に気付いて微笑むと、お盆を置いて姿勢を正しアルバート様に頭を下げる。
「結婚を認めて頂き、ありがとうございます。
……必ず、アカリさんを幸せにします」
「っ……」
嬉しくて、幸せで……。
たくさんの感情が溢れて……。
私の瞳からは涙がポタポタこぼれ落ちた。
最初のコメントを投稿しよう!