第一幕 スティムソンの訪問

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選挙から数日すぎたある日の午後、スティムソン陸軍大臣がローズヴェルトを尋ねてきた。彼もまたお世辞を込めて『大統領』と呼んで話しかけた。自尊心が強く、強烈な自意識を持つローズヴェルトにとって、まさに麻薬と同じだった。お世辞は実に心地の良い。まんざらでもなさそうにローズヴェルトが答えた。 「いや、私はまだ大統領ではないんだよ。宣誓式が終わってから大統領と呼んでくれ」 ひとくさり、お世辞の欧州と世間話が終わった後に2 人は本題に入った。 「ところで、スティムソン陸軍長官。今日私を訪ねてきてくれたのはどんなご用かな」 「ええ、それなのですが、大統領。以前、私が発表した対日政策についてはご存知だと思いますが」 「知っている。スティムソン・ドクトリンとして新聞がすっぱ抜いていた例の奴だろう。しかし、その後それがどうなったのかは知らない」 「実は、私の案はフーバー大統領から拒否されました。しかし、私は現状を考えると、放っておけば日本はますます増長するでしょうし、日本の中国大陸に対する侵略はますますエスカレートしていくでしょうし、そうするとアメリカの中国大陸における権益が破壊され、我々の国益に対する脅威はこれ以上にないものとなります。私はこれ以外の対日政策は有り得ないと考えています。そこで、大統領にもその辺りの事情を詳しくお話しさせていただきたいと思っております」
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