第一幕 スティムソンの訪問

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みさなんは気付いたかな。スティムソンのローズヴェルト訪問は対日強硬政策を進言するものだったのだ。スティムソンの主張を要約すると、1)中国の主権尊重、2)日本の満州での軍事行動の非難、3)パリ不戦条約に違反するいかなる行動をも認めない、4)中華民国への軍事行動によって生じた新たな条約や中国大陸における一切の変化を拒否、5)中国に対するアメリカの条約上の権利や権益の侵害を認めない、6)中国における門戸開放、7)日本への経済制裁、の7項目になる。日本にとってたいへん厳しいものだったし、経済制裁というのは形を変えた戦争行為だったのさ。 ローズヴェルトが独り言を言っているかのように聞き返した。 「フーバー大統領が長官の進言を拒否したというのは初耳だが、何故だろう」 「フーバー大統領は、『経済制裁は銃を伴わない戦争だ』というお考えをお持ちで、私の案では日本との間で戦争になる。それは避けなければならない。というお考えでした」 「戦争になる? それが拒否の理由かね? 戦争? 結構じゃないか! 日本人の好戦性を考えれば当然に戦争もあるだろう。日本との将来の戦争は避けられないかも知れない。ならば後回しするよりも、今戦った方がいいではないか? 違うかね?」
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