そら

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貴女にとりつく病魔が何なのか僕には皆目見当がつきませんでしたが日に日に悪化していることには僕ですら分かりました。 「毎日、病院を抜け出して大丈夫なのですか?」 差し入れと言い持ってきたスポーツドリンクを手渡してくれながら貴女はこくんと頷きました。 「ちょろいちょろい…このくらいの距離と時間なら大丈夫よ」 「……そうですか」 からからと軽く笑った貴女はふっと空から地面に視線を落としました。 そして何故かぎゅうっと僕の手を握りました。 「どうかしましたか?」 貴女は儚い顔をして珍しく口ごもりました。 「あたし…もう来れないかもしれない」 「見つかったのですか?」 貴女は首を横に振りました。 「私…もう少しで死ぬの」 どういうことですかと僕が尋ねると貴女は初めて病気のことを口にしました。 貴女はもう長くないと察しているようでした。 そして明日く僕は訊きました。 「僕に何かしらできることはありますか」 貴女はしばし考えてキスを求めました。 「こうやって死ぬまでには恋人みたいなことをしてみたかったの」 照れた貴女はうつむいてはにかんでいました。 いずれ消えてしまう命と関わりをもつことはとても儚く切ないものでした。 突然のことに戸惑いながらも僕はその肩をよせあい、恋人の真似事をしました。 「最期だから教えてあげる」 ふいに貴女は顔をあげて僕を真っ直ぐと見ました。 「名前。静香っていうの」 貴女は……いや、静香はそういったあと満面の笑みを浮かべました。 「静香さんもあの空に行けるのですね…」 「そうよ」 「羨ましいです…」 僕は死にたかった。 死に損なったこの身をもてあましていた。 だから空を望んだ。 いつか僕にも天使が舞い降りるのだろう…… それまで僕は……image=71417316.jpg
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